星ひとつ。

パーソナリティ障害の『A』をめぐる、愛と葛藤の奇妙な冒険。

と、いうか、

 

 

まず、『パーソナリティー障害』ってなに?
ということから。


わたし自身も数ヶ月前まではそんな病名はおろか、そんな人がこの世の中に存在していること自体知る由もありませんでした。


『なんか少し変わってる人』というくらいで
気にも留めませんでしたし、初見では、恐らく「あ、この人はパーソナリティー障害だな!」と、感じ取ることは、まずもって無いかと思われます。


それ程この障害は判断が難しいことと、ともすれば自分の周りにいる身近な人が実は『かなり厄介な人』である可能性もあるのです。


わたしも専門的に勉強したり、直接医師の見解を仰いだわけでもないのでざっくりとした説明とはなりますが、今までに読んだ本の中から分かりやすそうな症状を抜粋してみました。


・離れたくない『見捨てられ不安』
・良い/悪い・白/黒しかない世界『二極化』
・生きてる感じがしない『空虚感』
・自分が自分じゃないみたい
『不安定な自己像』
・めちゃくちゃ過ぎて皆んな付いていけない
『不安定な対人関係』
・突然キレる『不適切で激しい怒り・癇癪』


※その他自己破壊的な行動(リストカット過食嘔吐、浪費など)、ストレスによる解離症状もあります。


他のパーソナリティー障害の方がどんな症状なのかは実際に会ったことがないので分かりませんが、彼に関して言えばこの『見捨てられ不安』『二極化』『空虚感』『不安定な自己像』『癇癪』が特に顕著でした。
(症状に関しては、人それぞれに性格・性質があるようにパーソナリティー障害だから必ずこれがある、というわけでは無いようです。実際に、彼には自傷行為はありませんでした。)


これらの発症は、人格が形成される主に幼児期の間に、何らかの理由で母親から十分な愛情が与えられず、過度の心的不安、ストレスにより脳がダメージを受け、感情のコントロールが不安定であったり、衝動性を抑えられないといった精神疾患です。
ただ、この障害を〝病気〟とするか、〝障壁となる障害〟とするかは専門家の間でも意見が分かれるそうです。


その辺りは今後研究が進むことと思われますが、とにかくこの障害は親と子の愛着障害であり、それによって本人又はその家族や周りの人物が苦痛を感じたり、困った事象が発生する障害だということです。
(嬉しいや悲しいなど感情がうまく機能していない時もあるので、わたしは感情不全でもあると思っています。)


彼と関わっていて日常的にされていたことは
『試し行為』です。


例えばまだ仲が良かった頃、こちらがデートに誘いたくて「この前××へ行った。すごく良かった。」という話をしたとします。


そこですかさず彼は「自分も〜へ行ったことがある。もし行くなら案内してあげる!」と、
まるで一緒に行くことを前提のように話を進めます。
その後もそこでの楽しい思い出や見所などを話し、お互い距離が十分縮まったところでこちらが「じゃあ、今度の休み、一緒に行かない?」と話を持ちかけたとします。


そこで返ってくるのが


『いや、それは出来ない。』


という言葉です。


初めあれだけ乗せておいた話題を、なんの脈絡もなくいきなりぶった切る、ということが相当数あったことを覚えています。


あれ?さっきまでの話の流れはどうなった???とこちらは戸惑いますが、彼にはそんなことは関係ありません。


「え?なんか、行くって流れじゃなかった?」「いや、別に行きたいとも思ってないし、面倒臭いやん。」


面倒臭いって…


こちらの意図に関せず、彼は持論を展開します。(次にもっと◯◯出来たらな!など『行けたら行く。』くらい見え透いたはぐらかしも日常茶飯事です。)


「そっか。じゃまた今度ね!」


と、相手を受け入れるような発言をした日には、「おう!今度な!」など、一体どっちなのか分からない反応をされることも少なくありません。


この行為は幾度となく繰り返され、まるで何度断っても縋り付いてくるのを待っているかのような、〝主従関係〟が出来上がってしまいました。


そのようなことが毎回起こると、こちらも相手の不遜な態度にだんだん苛立ちを覚えてきます。


「前◯◯したら行くって言ってなかった?あれどうしたの?」
「俺は友達でもない奴と休みの日会ったりせえへんから、はっきり言って今後行くことはない。」


まるで今までの会話はなんだったのか。
と言うくらい別人と化すことは珍しくありません。


そして最も特徴的な反応は、こちらの感情がそのまま相手に投影され、おうむ返しのように返ってくる、ということです。


この障害の頭には『境界性』と付くことがありますが、それは他人と自己との境界が曖昧で、相手が怒っていれば自分も不愉快な気持ちになったり、自分の感情を自分で選択できない理由があります。
(例:悲しい思いをした→この悲しい気持ちが分からない相手はおかしい→相手を責める、など)
先程のようにこちらが苛立ち、多少キツイ言葉になったとすると、その×2倍くらいのキツイ言葉が返ってきます。


『お前と付き合うのは会社の上司(彼が最も毛嫌いしている女上司です。)と付き合うようなもん。』


『お前とは合わない。合わない奴とは付き合えない。』


『無視してないって言うとるやろ。お前が話しかけて来た時、俺が無視でもしたか?
一体どんな関係を望んでるわけ?』


このような類いのことを言われるのは、いつも相手の暴言を咎め、改めるよう諭す時が多いです。
少しの批判や注意ですらも過敏に反応し、
自己が折れないよう徹底的に相手を否定する脆い精神で彼は構成されているようです。


ここまで来るとわたしもこれ以上相手を受け入れることはできません。
もう関わらないことを告げると、その時だけは
「そうか、また会社でな。」


と返事が返ってきます。


翌日会社へ行ってみると、そこには絶望感に打ちひしがれ、まさに見捨てられた子犬のようにうな垂れている彼の姿が。


自分で批判されるようなこと言ったのに、なんなんだあの人…


『脆く、弱い精神』、『衝動的な感情のコントロール』、『共感性の欠如』
こういったことも、この障害を表す特徴的な事項であると思います。